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2006年11月18日

理由 / 宮部みゆき著(朝日新聞社)

image 今回も単行本でかなり分厚いもの。巻いてあった帯によると直木賞受賞作だとか。この作家の本は確かずいぶん前に読んだことを思いだして、前のブログを検索してみたら次の本が出てきた。
鳩笛草、ばん祭/朽ちてゆくまで(宮部みゆき著)
日付を見ると2004年5月12日となっていて、まだ「乱読、手当たり次第」というカテゴリを開始する以前だったようだ。その時の感想を記していないのが少し残念。

この本の帯にはミステリー、エンターティンメントとして1998年に絶賛されていたことが記されている。それで、わたしはミステリー小説だと思って読み始めたのだが、どうもその範疇には入らないような気がする。ミステリー小説を読み進めるうちに感じる、ワクワク、ドキドキ感がない。取り止めのないおしゃべりを延々と聞かされた後のような、砂混じりの料理を食したような後味の悪さを感じる。

社会問題を取り上げた小説として、違った角度から読んでみれば、それはそれで良かったのかも知れない。それにしても話の展開が冗長に過ぎるような気がする。一つの素材なりテーマなりを作家がいったん手中に入れて、それを作家自身の感性で文章に組み立て直して展開していくのが本来の小説道だとわたしは思う。読む方もそこを楽しみにして本を読むのである。この本は、作家が集めた情報をそのまま垂れ流しているように感じてならなかった。この方法でよりリアリティーを感じさせようという目的があったのかも知れないが、わたしには受け入れ難かった。

(2006年11月18日、読了)