スピーチ

2017年1月14日にユリア(次女)が結婚した。付き合って7年越しのゴールイン。その日は市役所(Rathaus)での結婚式で日本流に言えば「入籍」という事になる。ドイツ語では Standesamtliche Traung という。そのあとパーティはしたりしなかったりだけれど、一般的にはこじんまりとした友人だけの集まりで済ませることが多い。そのあとに教会での結婚式が控えていて、この時にはかなり大がかりなものとなることが多い。

今回はユリアが妊娠しているということで子供の誕生前に籍を入れておこうということだった。教会での結婚式は1年半後に計画しているそうだ。それまではかなり時間があるので今回は双方の家族と限られた友人数人でのパーティとなった。総勢28人である。

ドイツの習慣として結婚式のスピーチは花嫁の父親がする。わたしは結婚式が終わったあと唇にヘルペスが出来てしまった。これは心身のストレスが溜まると発症することが多いらしい。今回は介護が必要な義母をどう出席させるかという別の問題もあったけれど、このスピーチをどうこなすかということがストレスの原因だった。(^_^;)

ブリギッテに「わたしは外国人なのだから君が替わってスピーチしたら?」という提案をぶつけてみたが却下!「伝統は重んじなくてはなりません、そしてわたしは人前でスピーチをする度胸も素質もありません」というのがそのいいわけ。

では、百歩譲ってスピーチの原稿だけは書いてくれと云うとこれはスンナリと受け入れてくれた。彼女、こういうものを書くのはけっこう好きで、毎年彼女が書く Weihnachtsbrief はところどころにユーモアが散りばめられていて読んでいて面白い。

今回は双方の家族が中心のごく小さな会食だったから、双方の家族の紹介も入れましょうということで出来上がってみると約9分のスピーチ原稿になった。

ほぼ二週間前からわたしはその原稿を読み上げる練習を始めた。彼女が1日の勤めから戻って食事が終わってからわたしがその日に練習した原稿を彼女の前で読み上げるのだが、そのつど小さな直しが入った。すると翌日はその変更点をまた練習である。

こういうものは時間を掛ければいいというものでもなく要点を絞って「ここだけは間違えないように」とか「ここは軽く流して」とかを考えて短時間でも集中して何度かやったほうがいい。それを家事の間にちょこちょことやるのだ。なんだか現役時代の暗譜作業を思い出してしまった。

さて、もちろん全て丸暗記は危険だから紙にプリントアウトして本番ではそれを読み上げることになる。この点ではわたしは Nationaltheater のインテンダント・Bachler 氏を見習っている。

以前、ミュンヘンのフラウエン・キルヒェでのミサがあったときに彼が壇上で聴衆に挨拶したことがあった。そのとき合唱団員のわたしは彼のすぐ後ろで彼の一挙手一投足を見ることが出来た。印象に残っているのはそのとき彼が内ポケットから取りだした原稿のフォントがとっても大きかったこと。なるほど、これなら少々照明が暗くても読み間違えるという事は無い。そしてかなりゆっくりとした口調で全体を締めくくった。彼はもともと舞台俳優だからその辺はプロの仕事ぶりである。これが今回は大いに参考になった。

市役所での式が終わって予約してあったレストランに入ってみると、そこはかなり大きな部屋でわれわれ以外のお客も座って食べている。われわれは30人に満たない人数だったから市役所から徒歩で移動出来る距離のレストランで一部屋貸しきると云うことは無理だった。

われわれの席がレストランの真ん中に小島のように設定してあって、その周りを他の客のテーブルが囲むという配置だった。好むと好まざるにかかわらず,わたしがスピーチしたらそれを他の客も聞いてしまうということになる。これはわたしの想定外だったから焦った。しかし席に着く前に隣の部屋のカウンターで歓迎のゼクトやワインが出たので,そのアルコールで少し気分が楽になる。

わたしが立ちあがってまず話したのは、原稿にはまったく書いてなかった他のお客さん達への挨拶だった。要約すれば「つい先ほど若い人たちが結婚式をあげ、この部屋で会食をすることになった。ドイツの慣習としてわたしがスピーチをするけれど約9分間の短い時間、皆さんのお食事を邪魔するかもしれない。若い2人の門出だとどうぞご容赦いただきたい。」というものだった。

次にこれも原稿にはなかったこと。もし原稿の読み間違えなどがあったときの言い逃れである。(笑) これにはヨハン・シュトラウスのオペレッタ「コウモリ」を使った。この楽しいオペレッタの最後でアイゼンシュタインが妻のロザリンデに謝る台詞をもじって「もしわたしが言い間違えたり、台詞を噛んだりしたらそれは先ほど飲んだゼクトのせいです」ということで、これで場の空気がずいぶん柔らかくなった。この2つの想定外の挨拶はあとでブリギッテに誉められた。そして他の席のお客からもおめでとうの挨拶をいただいた。(^_^)

終わってみて本番が一番良い出来だったと自画自賛している。

スピーチ」への2件のフィードバック

  1. おめでとうございます。無事に花嫁のスピーチも トドコーリなく(これこんな時の常套句)見事にされて良かったですね。ドイツの結婚式の習慣・しきたり、わかって楽しく読みました。良い雰囲気だったこと目に見えるようです。周囲の他のお客様への配慮ある御挨拶も、オペラの妻へのセリフをもじって柔らかく妻とお聴き下さった関係者の心に添った言葉は温かく、優しく、今話題の大国の政治家に爪の垢でも・・・と思ったことでした。大役果たされましたね。

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