切符が回ってきたので昨日は「ルル」(アルバン・ベルク作曲)を観てきた。
このオペラはわたしの現役時代も異なる二つの演出で上演されていた。しかし、わたしはこのオペラは観たことがない。「ルル」は合唱が入らないオペラなのでこの公演があるときには合唱団は休日か別のプローベが入っていた。
せっかくの休日に⒋時間にもわたるこの複雑なオペラを観る体力と気力が無かったというのが正直な話である。今回は2回の休憩があった。
舞台装置はガラス張りの小部屋で迷路のように複雑に構成されたものだけ。幕ごとの場面の転換もない。ということは歌手たちの歌唱、演技にこのオペラの成否が委ねられているといっても良い。
今回の演出では大勢のエキストラたちのパントマイムがところどころで入ったから、それが全体のアクセントになっていた。調和の取れた動きで、舞台に掛けるまではかなりの練習量ではなかったかと想像する。
ソリストたちの歌唱は素晴らしかった。ベルクの音楽を揺るぎない音程で持続するだけでも大変だと思うのだが、各人が音色の明暗、強弱を見事に表現していてさすがのクオリティ。リートの演奏会を聴いてみたいと思わせるソリストが何人かいた。
主役のルルを歌ったペーターセンはその中でもやはり抜きんでて輝いていた。あの難しい役を破綻すること無く聴かせてくれたし、彼女の肢体も美しく、役にはまりきっていた。でも、わたしはエロスをあまり感じなかったのはなぜだろう。男共を狂わせる隠微さの発散がわたしの期待ほどではなかった。わたしの座った席はパルケットの前から5列目だったからかなり細部にわたってみることが出来た。
ペトレンコの指揮するオーケストラはピッタリと歌と場面に合わせて全体のアンサンブルを支えていた。刺激的な音もほとんど皆無に近かったから時には映画音楽のように自然な響きでどこまでも舞台と歌唱を邪魔することはなかった。これもペトレンコの手腕なのだろう。
楽しい一晩の体験だったが、このオペラをCDなどで音楽だけ取りだして聴くのはわたしにはかなり辛い作業だ。この夜も2回目の休憩を終わって3幕目にはパルケットにはかなりの空席が見られた。
次のリンクから舞台の動画と写真を見ることが出来る。
Mediathek: Bayerische Staatsoper
Musikalische Leitung:Kirill Petrenko
Inszenierung und Bühne:Dmitri Tcherniakov
Kostüme:Elena Zaytseva
Licht:Gleb Filshtinsky
Produktionsdramaturgie:Malte Krasting
Choreographische Assistenz:Tatiana Baganova
Lulu:Marlis Petersen
Gräfin Geschwitz:Daniela Sindram
Eine Theater-Garderobiere:Rachael Wilson
Ein Gymnasiast:Rachael Wilson
Ein Groom:Rachael Wilson
Der Medizinalrat:Christian Rieger
Der Bankier:Christian Rieger :Der ProfessorChristian Rieger
Der Maler:Rainer Trost
Ein Neger:Rainer Trost
Dr. Schön:Bo Skovhus
Jack the Ripper:Bo Skovhus
Alwa:Matthias Klink
Ein Tierbändiger:Martin Winkler
Ein Athlet:Martin Winkler
Der Prinz:Wolfgang Ablinger-Sperrhacke
Der Kammerdiener:Wolfgang Ablinger-Sperrhacke
Der Marquis:Wolfgang Ablinger-Sperrhacke
Der Theaterdirektor:Christoph Stephinger
Eine Fünfzehnjährige:Elsa Benoit
Ihre Mutter:Cornelia Wulkopf
Eine Kunstgewerblerin:Heike Grötzinger
Ein Journalist:John Carpenter
Ein Diener:Leonard Bernad
Schigolch:Pavlo Hunka
Der Polizeikommissär:Nicholas Reinke
Bayerisches Staatsorchester