カローラ,「青少年音楽コンクール」予選通過 


カローラは今日の夕方から彼女にとっては3回目の挑戦である「青少年音楽コンクール」ミュンヘン地区予選 Jugend Musiziert 2006 に出場した。 

最初の年はフルートを習い始めて一年しか経っていない出場だったので励ましの意味もある三等賞だった。去年は自分の楽器も手に入れてかなり本気で臨んだコンクールでなんとか一等賞を貰ったがミュンヘン地区の予選を突破するまでには達せず。今年は3回目の挑戦ということでなんとか予選を突破したいと自分でも思っていたらしい。相変わらず毎日学校から戻ると熱心に練習する姿は、怠け者の親にとってよい刺激となっている。(^_^;) 今年彼女が用意した曲は次の3曲。

1.Carl Reinecke: Konzert D-Dur op.283; 3.Moderato (6'50")
2.W.A.Mozart: Andante in C-Dur KV 315 (6'00")
3.Arthur Honegger: Danse de la Chevre; Lent / Vif (4'10")

今年は3回目の挑戦とあって、わりと平静だなと思ってみていたのだが、さすがに当日ともなるとソワソワしているのがよくわかる。そりゃそういうものだ。試験とかオーディションの時に平常心でいられることの方が不自然なんだから。もう一つ気になるのは今日演奏する楽器が先日購入したばかりの SANKYO のフルートであること。彼女はこの楽器をとっても気に入っていて、購入後一日も早く慣れようと努力していたがそれでもやはり一抹の不安は残っている。

今年の会場はわたしもミュンヘンに奨学生としてきた年に一年間お世話になった Musikhochschule(ミュンヘン音楽大学)ー 現在は "Hochschule für Musik und Theater" という名前に変わっている。ここの大ホールは音響の良いことでも知られているこじんまりとした会場。有名なミュンヘン国際音楽コンクールの会場にもなっている。数日前にここを使っての練習もさせてもらえたそうで、凄く響く会場だというのは彼女も認識していたようだった。

カローラの出番は夕方5時20分からに予定されていて、最後から3番目。年齢別にクラス分けされていてカローラのクラスは18歳まで出場資格がある。公開演奏なのでわたしは彼女の前に演奏した2人の参加者の演奏から聴き始めた。この2人は技術的なミスも目立ったし音の粒も揃っていなくてまだまだ、という感じだった。

さて、カローラの番になってわたしも緊張する。(^_^;) 最初の曲は無伴奏の曲なのだがやはりアガッているのか一箇所ミスがあった。しかし出てくる音はまろやかで品があり前の2人とは違っている。2曲目のモーツァルトはその特性がプラスに出たのか聴いていても安心できて楽しめた。3曲目は少し派手な曲だがもう少し感情の高揚が発散されてもいいなと、物足りなさを感じた。しかし、悪くない。

だが、次に出てきた一歳年上の女の子の演奏を聴いたとき、正直言って「うまいなぁ」と思った。特に無伴奏の現代曲が素晴らしかった。楽器が身体の一部であるかのように達者に吹いているのを見て内心「今年もカローラの夢は叶わないだろう」とガックリ。最後の演奏者も呼吸するときの音が少々耳障りだったが長いパッセージを一息で吹きあげる技術的特徴を見せて健闘している。わたしの予想ではカローラの次に弾いた子が一位でカローラは運が良ければ2位、もしかすると3位。どちらにしても予選を通過できるのは一位の者だけだから今年も駄目だったかという思いがした。次に浮かんだ考えはどうして彼女を慰め、元気づけようかということ。これは簡単なようで難しい。下手に慰めて貰ってもかえって傷つくだけだというのはよく解るのである。

全員の演奏が終わってから、審査員3名との個人面談がある。これには演奏者の先生とか家族の関係者も同席しても良いことになっている。(このへんの配慮は羨ましいかぎり)その時にも審査員の1人が「一曲目のミスは惜しかったわね、演奏する曲の順番を替えたら良かったのに。モーツァルトはカデンツァが少し長すぎたと思うけどとっても素敵だった。最後の曲はもっとギリギリまでの可能性を追求しても良いと思う。しかし全体を通してとってもエレガントな音色です」とほぼわたしと同じ感想だった。その場の空気からわたしもそしてカローラも彼女の先生も今年も予選突破はかなわずという覚悟を決めた。そのあとの正式発表までの約30分間、カローラの周りはどことなく沈んだ雰囲気になる。

そしてまたホールに戻っての正式発表。固唾をのんで聴き入っているとカローラが一等賞で、予選を通過したことが告げられる。一瞬自分の耳を疑ったがカローラも同じだったと見えて彼女の眼から涙が勢いよくこぼれだした。フゥ〜、なんということだ。しかしよかった。結果はカローラの次に演奏した2人も一等賞で予選通過。2位は無しということだった。点数はカローラが23/25(25点満点の23点)、わたしが一等賞だろうと思った子も同じ、最後の子が24/25だった。次は3月23日〜26日にAugusburg近郊での2次予選ということになる。

ブリギッテとユリアは演奏の終わったあと "Lach und Schießgeselschaft" の方に行っていたのでその結果を知らないので、携帯に連絡しておき、カローラと二人でPIZZAを食べながら乾杯。なによりも彼女の嬉しそうな顔が見れて本当に良かった。

最後に、今回も感心したのだが、このコンクールの基本にある考え方が、若い演奏者たちを鼓舞して次世代の人材を育てようということで、それが参加している全員に伝わっていること。賞を取らなかった子供たちにも「次の年はきっと!」と思わせる暖かい励ましと配慮が伺える。 

Posted: 2006年02月05日 (日) at 23:21 




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