Kurt Moll 氏、引退を表明3日ほど前の新聞報道によると、バス歌手のクルト・モル
(Kurt Moll)
氏が正式に引退を表明したようです。1938年生まれで現在
68歳。47年間にわたるオペラ歌手の活動を停止するとのことでした。 彼は、肩の故障で手術を受けたあと、ミュンヘンの舞台で今年の2月に新演出・上演された「さまよえるオランダ人」
(Der fliegende Holländer)
の時もダーラント (Daland)
役にクレジットされ、舞台稽古もほとんど最後の段階まで勤めていたのですが、その時には体力的にもかなり弱っているな、という印象を受けました。舞台稽古の時に、わたしも「体調の方はいかがですか」と尋ねたときがありまして、その時には「もうすっかり大丈夫だよ」ということだったのです。その時には声の方も高い方が出なくて苦労しているようでしたが、体調が快復すればそれも元に戻るだろうという期待はありました。
しかし、体調の快復はうまく進まなかったようで結局 "Der fliegende Holländer" の初日は急遽 マッティ・サルミネンが歌うことになった経過があります。そのあとミュンヘンでは「運命の力」に出ていましたがやはりかつての彼の歌唱ではありませんでした。新聞のインタビューを読むと、オペラの舞台からの引退は心臓機能の悪化のためであるという彼の答えです。 Liederabend があと2回ほど組まれているようで、それが最後の舞台となり、その後は後進の指導にあたると述べておりました。 彼はわたしの好きなバス歌手の1人でした。深々としたいかにもドイツらしいバス。それでいてかなりの高い音域まで軽々と出せ、その音色に独特の味わいを持った人でした。体躯も堂々としていておよそバス歌手に要求されるほとんどの条件を備えていた人。「薔薇の騎士」のオックス男爵、から「魔笛」におけるザラストロまで、様々な役柄をキッチリと表現できた貴重なバス歌手でした。 引退されるのは惜しいような気がしますが、人間、誰でもいつかは終わりが来るもの。ご苦労様でした。 Posted: 2006年07月17日 (月) at 16:33
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