仕事納めは「マイスタージンガー」(長文です) 


晴れ / 外気温36度
7時20分起床。今日は今シーズン最後の日。それに劇場首脳部の交代が重なり、昼から盛りだくさんのイベントがあった。すべてをこなして帰宅は午前1時半。さすがにそれから日記を書く気力がなくてそのままベッドに直行した。一日遅れの日記である。 

朝起きるとすぐに1時間の散歩に出掛ける。今日は昼からは歩けそうにもないほどに予定が入っていたので、朝のうちに済ませてしまった。11時からカローラの運転するSMARTに乗って彼女の作ったケーキ2つを市内某所に届ける。数日前に、カローラが誕生日のプレゼントに貰った銀製の腕輪がブカブカなのでそれを小さくして貰った。これはブリギッテの勤める宝飾店の作業所でしてくれたので、そのお礼にとカローラがケーキを焼いたというわけ。二つのケーキを運ぶのにはブレーキを掛けたときなどにやはり同乗者がいて、しっかり保持していた方が安心と言うことで、わたしが助手席に座りケーキのひとつを膝の上に乗せて運んだ。それが済んでからお昼からのパーティ会場まで送ってもらう。
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12時からは Zubin Mehta 氏からの招待でビアガーデンでの昼食会。このビアガーデンは中央駅からほど近いところにある「アウグスティーナ・ビアガルテン」 (Augstiener keller)。ミュンヘン市内でも有数のビアガーデンである。この日は4時間後にシーズン終了の「マイスタージンガー」" Die Meistersinger von Nürnberg " が控えていて、ちょっときついなぁと思ったのだが、 Zubin Mehta 氏も多忙な人だからこれ以外の日程が取れなかったのだろう。劇場関係者で来れる人は誰でも、同伴者を連れて参加して欲しいということだったが、舞台関係者は舞台作りで忙しいだろうし、同伴者は勤めを半日休むことになるので(今日は月曜日)それほど多くの人が来たわけではなかった。わたしも1人での参加である。
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しかし、折からの素晴らしい夏の天気で、いつもより少し湿度が高いかなと思われる空気が、ビールのおいしさを倍加してくれた。合唱団の同僚たちも徒弟役(Lehrbube) をやる連中は、1幕での大仕事があるので参加していなかったし、オーケストラの連中も長時間(16-22時) の演奏をしなくてはならないためかさすがにチラホラとしか見なかった。(汗)わたしは、幕が上がってすぐのコラールが終わったあとは2時間少々の休憩があるので、そこで休めるという計算があった。写真にあるようなおいしい食事を摂りながら Weißbier を2本平らげる。

午後3時にそこを出て劇場へ。楽屋に入ると床の上に3本の Sekt が小さなカードと共においてある。これは今日を最後に年金生活に入る女性の同僚が、各楽屋へ置きみやげとしたもの。さすがにこれを飲むわけにはいかないので(酔っぱらってしまう)来シーズンまでとっておこうということになった。計画していたとおりに最初の出番が終わってから、わたしは楽屋の椅子を並べて、その上で熟睡モードに入る。これは快適だった。(^_^)

2幕の最後、喧嘩騒動の場面のあとで Kurt Moll が夜番(Nachtwächter) の役で出てきた。今夜が彼のオペラ歌手として最後の舞台である。さすがにこの端役には勿体ないほどの堂々とした歌唱で幕を閉じたあと、われわれ合唱団も全員舞台に出て(ふだんはこの場面でカーテンコールには出ない)全員で彼のオペラキャリアを称えた。観客もほとんどスタンディングオベーションとなり、これが20分余りも続いたろうか。彼はこのあと数回のコンサートがあるらしいが、それをこなしたあとは後進の指導に当たるということである。

合唱団はこのあとまた2時間近くの休憩。今日は公演終了後に舞台裏で恒例のシーズン終了パーティがある。加えて今夜は総支配人の Sir Peter Jonas 氏と音楽総監督の Zubin Mehta 氏のお別れパーティも兼ねるので、われわれはアトラクションとして歌う曲の練習をする。

オペラ最終場面の Peter Seiffert のアリアは近年にないほどの集中力と輝かしい声で素晴らしかったが、肝心のハンス・ザックス役である Jan-Hendrik Rootering がスタミナ切れか、ちょっと心配になる場面もあった。(汗)カーテンコールになりバイエルン州・文化相である Thomas Goppel 氏が登壇して Sir peter Jonas 氏と Zubin Mehta 氏のこれまでの業績を称え、感謝状を贈る。最後は観客と、われわれ全員に前もって渡されていた白いハンカチを一斉に振って、彼ら2人にお別れを告げて幕となった。

そのあとは舞台裏にしつらえて準備してあったパーティ会場に移り、ここからは劇場関係者・招待者だけの内輪のパーティとなる。今回は入場制限もいつになく厳しく、前もって渡されていた腕輪をしていないとガードマンに入れてもらえない。それでも、あの広い舞台裏が(客席から見える舞台の約3倍の大きさ)人でギッシリと埋まった。飲み物は生ビール、赤ワイン、白ワインと豊富だが料理の方は数種類のパスタとソース、それに簡単なオードブルで簡潔なもの。今夜の主役は大画面を使った映像であった。その間を縫って合唱団有志による "Time to say goodbye" があったり、バレエのソリストによるコミックな踊りがあったりして盛り上がる。わたしもその間に同僚や友人たちとシーズン最後の挨拶を交わして午前0時半頃に帰宅の途につく。一日中「別れ」というテーマが続いた長い時間だった。疲れたけれども、明日からは待望の夏休み〜! 

Posted: 2006年07月31日 (月) at 13:06 




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