カローラの音楽コンクール参加 


朝から雪降り
7時半起床。外気温はプラス1.2度。雪が降っているにしては、そんなに寒く話さそう。ブリギッテはわたしより少し早く起きた様子。1週間分の食料の買い出しに行くので早起きだとか。週末の始まりで、もう少し寝ていたいだろうに、ご苦労様。日本のように日曜日も店が開いていたらいいのに、とこんな時には思ってしまいます。 

ユリアは昨夜は友達と会って、夜中の12時半頃に帰宅。わたしはまだ起きていたのですが「明日は、遅くとも10時までに起こしてね」と頼まれました。何か予定があるのかな。

今日は末娘のカローラのことを書きます。親バカぶりを発揮して、かなり長い文章になります。(^_^;)
カローラは今日、14時半からのフルートの部門でコンクールに参加します。いちおう、コンクール(Wettbewerb)とは呼ばずに、「青少年が音楽をする」"Jugent musiziert" と名付けていますが、内容はドイツ全土の音楽コンクールの第一次予選です。小さな地域のコンクールから始まって、州単位のコンクール、そして全ドイツのコンクール、と上がっていきます。

カローラはアンナ、ユリアと同じように最初はピアノを習い始めました。しかし二人の姉たちと違って、あまりピアノには興味を示さず、初めて2年ぐらいしてから止めてしまいました。それからずっと音楽には無関心な感じだったのですが、3年前に急に「フルートを習ってみたい」と言いだして、音楽塾(Musikschüle)に通い始めました。仲の良い友達がフルートを習っていたからかもしれません。習い始めて半年ほど、音楽塾で貸与している楽器を使っていましたが、興味が持てたらしく、自分の楽器が欲しいということで、彼女の堅信礼(Konfirmation)のお祝いに、われわれ両親と、彼女のPate(代母)の両方がお金を出し合って、「村松」の楽器をプレゼントしました。その時にわかったのですが、手頃な値段でよい製品というと日本製なんだそうです。カメラと似たような状況ですね。この楽器の選定と購入には、日本の音楽家である、友人夫妻に大変お世話になりました。

ここで出てきた "Musikschüle" について少し説明します。直訳すると「音楽学校」ですが、わたしが勝手に「音楽塾」と訳しています。これは、その地域の行政団体単位で作っている小さな音楽学校で、殆ど全ての楽器、声楽、を網羅しています。個人教授につくよりは、地方行政が援助しているので、かなり月謝が安いです。わたしはこれを、楽器をゼロから始めるときに、その手ほどきをしてくれる機関と位置づけています。アンナとユリアは、ピアノを習っていて、ある時点で先生に限界を感じ、現在では、自分でもピアニストとして活動している女性の個人教授に代わっています。

そこでついているカローラの先生は40代半ばのとっても気だての良い女性で、時々、わたしが働いている劇場のバンダ(舞台裏の音楽を演奏する人たち) "Bühnenmusiker" もやっています。側で見ていると、先生と生徒の関係が適度な距離を持って、好ましく、カローラがここまでフルートに興味を持てたのも、彼女の功によるところ大だと思います。先生と生徒との出会いというのは、これまた「運」ですから、カローラは良い先生に巡り会ったものです。

そして、昨年の今頃、初めてこのコンクールに参加したのですが、運良く3等賞をもらいました。まあ、「初めて間もないにしては、しっかりやっている。これからの励みに賞を出しましょう」みたいな感じでしたが(^_^;)。それで気をよくしたのか、今年も挑戦したいと言い出して、半年前から、課題曲を熱心にさらっていました。これが、けっこうバラエティに富んだ課題曲で、かなり技巧的に難しそうな現代曲も入っています。わたしは、彼女のフルートには全くノータッチでして、要求されたときだけしか意見を言いませんが、その時も、その曲を構成している音楽の大きな枠組みと流れぐらいしかアドバイスできないと思います。

フルートというのは、声楽と同じで、普通は伴奏者を必要とします。この伴奏者を捜すのがまた、一苦労。青少年音楽コンクールと唱っているように、伴奏者の演奏も点数の一部になりますし、伴奏者はカローラと同年代でなければなりません。やむを得ず、大人の人に伴奏して貰うと、その分、点数が引かれてしまうのです。(^_^;)昨年は、ユリアが伴奏しましたが今年は彼女も色々な事情があって、やってくれません。(自分の学校の勉強に忙しく、準備する時間がないのと、人前で演奏する怖さを知ったからだと思います。)同年代の子供で、ピアノを習っていて、一応まともに弾く子を探そうと思うと、これは意外に難しいものです。「ああ、あの子、良いなあ、頼んでみたら?」と思って尋ねてみると、もう誰かと約束していることが殆どでした。幸いに、同じクラスにピアノを好きな子がいたので、その子と一緒に参加することに決め、練習が始まりました。

彼女が一人で練習しているのを部屋の壁越しに聞いていると、かなり、苦戦している様子。言葉には出しませんが「今年は難しいだろう」と思っています。昨日は先生のところでゲネラルプローベだったのですが、惨憺たる出来だった、とちょっと落ち込んでいました。昨夜は「とっても不安になっちゃった。やれるかな」と言うので「神経を集中して吹くことだけを考えなさい」と慰めました。わたしも、音楽家の端くれだから、経験しているのですが、こういうときには、自分の心の中で解決していくしかありません。他人がどんなアドバイスをしても、舞台に上がったら、自分一人だけ。今のわたしの心は、コンクールのあと、彼女があまり落ち込まないように、どんな言葉を用意しておこうか、とそちらの方に行っています。ここまで書いていて、出発する時間になりました。あとの報告はまた、帰宅後ということで。

もう午前0時を過ぎてしまいましたが、先ほど帰宅しました。ビックリしたことには、カローラは1等賞を取りました。(^_^)
もう一人1等賞を取った子がいて、この子の方が次の予選に進むことになりましたが、カローラ自身も予想外だったらしく、とても喜んでいました。このコンクールは公開なので、わたしも客席で聴いていたのですが、彼女の出す音色には独特の美しさがあって、悪くありませんでした。でも、もう一人の1等賞を貰った子と比べると、公平に見て、技術的に、やはり向こうの方に一日の長があるかな、と思います。審査の結果は妥当なところだと思います。コンクールが終わったあと、次の予選に出る子供達が特別音楽会がありました。それを聴いたあと、イタリア料理店で祝杯を挙げていたので、帰宅が遅くなりました。

今日は、長い日記になってしまいましたので、このコンクールの詳細については、また、いつか書くことがあると思います。演奏する子供達の心理と彼たちの将来を傷つけない配慮に関しては、よく考えられた組織と運営だと感心することしきりでした。こういうところからドイツ音楽の伝統が継承されていくのかもしれないと考えさせられた部分が多いです。 

Posted: 2004年01月17日 (土) at 08:47 




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