歩く勇気 


トスカーナで夏休みを過ごし始めてから一週間になる。ミュンヘンにいるときには、トスカーナに行ったらきっと快適な散歩が出来るだろうと期待していた。しかし、こちらへ出発する2日前に別荘の持ち主に詳しい説明を聞いて、計画は怪しくなる。 

その人が言うには、この別荘の周りはよく蛇が出るということである。その蛇も一種類だけではなくて様々だとか。

「大体、長い蛇は無害だと思ってもいいけれど、長さが30~40cm の蛇に遭遇したら気をつけるように。それは毒蛇です。万が一噛まれるようなことがあったら、間髪をおかずにシエーナ(Siena) の病院まで車で走って血清を打って貰うように。 車中ではむやみに動かないで安静に横たわっていた方が毒の回りが遅くなっていいです。」

と平然とした表情で言われたので大いにびびってしまった。この別荘からシエーナまでは車でも40分くらいかかるのである。一瞬、車の中で脂汗を流しながら横たわっている自分の姿を想像してしまった。(汗)

実を言うと、別荘の主人の脅かしだろう、ぐらいに軽く考えて、この別荘に到着するまではかすかな期待を持っていた。しかし、第1日目にここまでの道を車でたどったときに、歩くことはすぐに諦めた。数キロメートルにわたって人っこ1人通らないような道で、いちおう車が一台だけは通れるような道が付いてはいるのだが、確かに、いつ蛇が横たわっていてもおかしくはないような感じである。それでも、数日前の昼間に一度だけ少し歩いてみた。しかし、わたしの目と耳は路上に横たわっているかもしれない蛇と、足もとの草むらから飛び出してきそうな音に気をとられて散歩を楽しむどころではない。(汗) この別荘の管理をしている女性にも、いちおう蛇の件を問いただしてみたら、彼女も平然として毒蛇の危険性を肯定していた。

それともう一つの伏兵が。というのはここはやたらと虻(アブ) (Bremse) が多いのである。車から一歩外に出ると虻の大群が襲ってくる。プールで泳いでいてもそれは同じ。水から出た途端にウワーンという感じでアブが飛んでくるので、それを払いのけながらすばやく身体の水滴を拭き取らなくてはならない。わたしの幼い頃、山中の川遊びにいった時を思いだした。このアブという奴、なかなか上手に身体に止まるので気がつかないが、喰われると痛いのとそのあと痒くなるのとで、わたしは戦々恐々なのである。

というわけで「トスカーナの明るい陽光と青い空の下で歩こう!」というわたしの甘い期待は、以上の二つの理由により、粉みじん。自然の雄大な営みに較べたら、人間の存在なんてちっぽけなものだと実感する。

(追記)
それに、イノシシが突然路上に現れたりしたら、これも怖い! まあ、イノシシというのは夜行性らしいから大丈夫だとは思うのだけれど・・・・・・‥・・・・・。(汗)

 

Posted: 2006年09月03日 (日) at 18:52 




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