バイエルンのビール純粋法 


先日、読んだ文庫本の中に、ドイツのビールに関する事柄が書かれていた。ちょっと面白いと思ったので、それについて少し書いてみます。 

わたしがドイツに住み始めた頃(1977年)には、日本の本をこちらで買って読むことはかなり困難だった。そのころからデュッセルドルフには日本人経営の本屋があって、そこから取り寄せることは出来たが、日本で買う値段の2〜2.5倍したから、奨学金で暮らしていた身にはなかなか買えなかった。そんな事情だったから、たまに、日本から訪れる人が持ってきてくれる新聞やら週刊誌は本当にありがたく、むさぼるようにして隅から隅まで読んだ。

今でも、本の値段は日本との開きはあまり変わらないと思う。ミュンヘンには古くから「日本人会」というものがある。ここの事務所へ行くと、一方の壁に本棚があって結構いろいろな本が置いてある。これらは会社の駐在でミュンヘンに来ていた日本人家族が読んだ本を寄付してくれたものらしい。わたしはときどき、ここを訪れて、本を借りてくる。最近は、ある日本食料品店の片隅にも、そういった本が並ぶようになった。わたしにとってはとても有り難いこと。もちろん、自分の読みたい本ばかりが並んでいるわけではないけれど、とにかく、日本の活字が書かれている本であれば手当たり次第に読んでみる、という条件反射がわたしの身体の中に出来てしまっている。(^_^;)

日本食料品店で借りてきて、昨日読み終えた小説の中に面白いことが書いてあったので、それを書いてみる。
その本は「偽装重役」/ 門田泰明 著/ 徳間文庫(1983.06青樹社より発売)という文庫本で、話の筋は日本の二大ウィスキー会社の確執を、主人公である若い重役の活動を通して綴ったもの。話の筋自体も、本当かもしれないなと思わせる書き方で、かなり面白かった。とにかくその会社の名前が「ホワイトリー」と「キング」というのだからかなりきわどい。ホワイトリーという会社がウィスキー作りからビールに進出して苦戦しているとか書いてあって、誰でもが、ああ、あの会社か、と思わせるような書き方。こんなことを書いて大丈夫だったのかな、と他人事ながら心配になった。(^_^;) 
その中にビールのことが出てくる。

ビール添加物については、わたしも自分で調べたわけではないので、事実とは違うかもしれない。小説の中では、日本の各社で造られるビールには以下の添加物が入っている、と書いてある。

●ポリアクリル酸ナトリウム・・・泡立ちを良くするため
●エリソルビル・・・・・・・・・酸化防止剤として
●DLアラニン・・・・・・・・・酵母臭を減らすため
●グリシン・・・・・・・・・・・味を良くするため
●Lアスコルビン酸・・・・・・・酸化防止剤として
●シリコン樹脂・・・・・・・・・消泡材として
●アルギン酸プロピレングリコールエステル・・・安定剤として


そして、それとは両極端に位置するものとして、ドイツのビール事情が書かれてあった。

ビールの本場である西ドイツのビール純粋法という法律は、ビールとは国内産の大麦とホップ及び水飲みを原料としたものを言い、それ以外を原料としてビールと称した場合は処罰する、と厳しく定めている。


驚くべきことに、これは現在でも変わっていない。この法律は1516年4月23日にバイエルンの公爵ヴィルヘルム4世が定めたもので "Reinheitsgebot" と呼ばれ、約500年後の今もバイエルンのビールはこれが守られている。そのせいかどうか、確かにミュンヘンのビールはおいしい。しかし、この恩恵を受けられるのはミュンヘン近郊、せいぜい枠を広げても国境を接しているオーストリア、スイス、あたりまでだろう。

この法律のせいもあるかもしれないが、近年は企業のグローバル化に伴って、バイエルンのビール会社経営もかなり難しくなってきているようだ。最近聞いた話では、ベルギーのビール会社の資本が入り始めているらしい。消費者の一員としては、この姿勢を守り抜いて、いつまでもおいしいビールを飲ませて欲しいと思うが、さてどうなりますか。
 

Posted: 2004年03月02日 (火) at 22:16 




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