ドイツの大学入学事情 


先週(7月8日)の日記で、えらい早起きをしてインスブルックまで往復してきたことを書いた。要はユリアの大学入学手続きに関してのインスブルック行きだった。これまで、わたし自身もボンヤリとしか理解していなかった「ドイツ大学への入学事情」の大まかな知識を整理してみたのでメモ代わりに書いてみる。 

わが家の次女、ユリアは先月無事にアビトゥーア(Abitur)を終わって大学入学資格が出来た。このアビトゥーア(Abitur)というものには当然ながら点数がつく。一番良いのは "1" である。基本的に、ドイツの大学には日本のような入学試験というものは無い。自分が大学で勉強したいと思う学科を捜し、その学科を持つ大学に入学願書を提出。その大学の受け入れ許容人員に余裕がある時にはそのまま入学が許される。

しかし、どの国でも新入生が殺到する学部というものがあって、例えば「医学部」そして「法学部」など。たくさんの希望者がその大学・学部に殺到すると当然の事ながら、ある線で許容人員をオーバーすることになってしまう。その時に効果を発揮するのがアビトゥーア(Abitur)の点数なのである。こういう時には点数の良いものから順番に入学が許され、その点数に達しないものは、他の大学を探すか、1年あるいは2年待つことを余儀なくされる。これをNumerus Clausus(大学の特定学科における募集定員制限・ラテン語)と呼んでいる。どうしても、その大学・学部に入学したい者は次の年に空席が出来るまでのあいだ、国内でアルバイトをしたり外国などへ出掛けて実習をしたりすることも多い。

で、先週の急なインスブルック行きだが、それには次のような事情があった。
オーストリアはこれまで外国人学生の受け入れに制限を設けていた。例えば、ドイツ国籍を持つ学生がオーストリアの大学で勉強したい場合に、すでにドイツの大学に席を持っていなければならなかったのである。この点については苦情が出ていた。オーストリアも現在は EU のメンバーである以上、オーストリア独自の制限を設けることは EU 憲章に違反しているという訴えである。それに関して、つい2週間ほど前に EU の機関による判決が出て、その制限が取り払われることになった。

このニュースが流れるとすぐに、ドイツからの大学入学希望者がオーストリアの大学に殺到する懸念が出てきた。とにかく、席を確保しておきたいというのが誰しもの人情だから、これは当然の帰結である。ちなみに、ドイツも大学入学希望者が年毎に多くなってきていて、その年にアビトゥーア(Abitur)を終了した誰もがスンナリ大学に入れるという状態ではなくなってきている。

先週(7月8日)早朝に車を飛ばしてインスブルックへ向かったのだったが、結果的には無駄な時間を過ごしたかもしれない。というのも、大学の窓口に願書を出しに行くと「 Internet で大学のサイトにアクセスし、そこから願書用紙をダウンロード。それに必要事項を記入して郵便で送る」ということになったそうである。確かに、一度に多くの願書が殺到したのでは係員も応対に苦慮することが予想されるから、この処置は理解出来るが Internet がここまで発達してきたかと云うことに感慨を持った。郵便の消印を見て早い順から採用するのか、または、自国の学生への入学が優先されるのかは、外部からは闇の中である。

ドイツの場合は一括して ZVS (Zentralstelle für die Vergabe von Studienplätzen) という機関が、学生配分を担当しているのでオーストリアよりはその辺が透明かもしれない。

とにかく、ユリアは現在数カ所の大学に入学願書を送ってあるが、その返事が来るまでにはまだ時間が掛かるようだ。その結果が出るまで、ジッとして待っているよりは身体を動かす実習 (Praktikum) に精を出していれば、気も紛れるだろう。(^_^;) 

Posted: 2005年07月13日 (水) at 09:45 




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