朝の歓び 上・下 / 宮本 輝著(講談社) 



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久しぶりの宮本 輝氏の本。この本は日本経済新聞の朝刊上で平成四年九月十四日から一年間にわたって連載されたものをまとめたそうだ。
始めもなければ終わりのもない小説として作り上げたかったのですが、その中で、生きることの歓びに触れている気配を感じていただけたら、それが<作者の歓び>となるでしょう。

作者の後書きを引用したが、始めも終わりもない小説を狙ったのは成功しているかもしれない。毎日連載する新聞小説だからか、小さな山は沢山あるのだが、小説全体としてみると大きなうねりが感じられなかった。同じような女性観、人生訓が度々出てきたりして、ちょっとくどいかな、と思う点もあった。でもこの著者のストーリーテラーとしての巧さはさすがだし、下巻の第八章「手紙」を読むと、ウ〜ンと唸ってしまう。この人の「錦繍」(きんしゅう)を読んで以来思うのだが、書簡形式をとった時のこの人は特別な冴えを見せる。(2004年9月22日読了)
 

 

Posted: 2004年09月23日 (木) at 21:23 




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