見えない女 / 島田荘司著(光文社文庫) 


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わたしにとっては2冊目の島田荘司氏の本。文庫オリジナル・傑作トラベル・ミステリーという副題で1.インドネシアの恋歌 2.見えない女 3.一人で食事をする女 の3編が含まれている。少し期待して読み始めたのだが、どうもしっくりと来ないまま読み終わってしまった。 

文章の間から訴えてくるものがない時には、必然的に筋を追うことに気持が集中するのだが、そこでもなんだか肩すかしを食ったような気分を味わった。「見えない女」というのはパリでの出来事を扱っていて、話の運びがちょっと面白いとは思ったが、どうも最後の落ちに現実味が乏しい。「一人で食事をする女」はまだ東西に分断されていた頃のベルリンが舞台。ミュンヘンとか、Neuschwanstein 城とかも出てくるのでちょっと興味深かったのだが、上部をなぞっただけで終わったような喰い足り無さを感じた。

次に引用した部分は、まあ、どうでも良いようなことだし、これらの話を書かれた1988年頃に比べれば日本からの観光客も桁違いに多くなっていて、ドイツ事情に精通なされている方も多いと思うが、ちょっとだけ付け加えておきたい。
うまいビールは、ミュンヘン、サッポロ、ミルウォーキーというが、わたしはむしろミュンヘンよりベルリンのビールが気に入った。ドイツのビールに関して、非常に特徴的なことがひとつある。それは、注文してテーブルに届くまでにすこぶる時間がかかることである。二十分も三十分もかかる。いったい何をしているのだろうと思ったが、友人の説明で納得した。すなわち彼らは、定められた量まで過不足無くビールを注ぐのに、これだけの時間を掛けているのだそうである。

上記の記述は間違ってはいない。しかし、ここで述べられているビールとは Pils と呼ばれている数ある種類のビールの中のひとつの種類である。ちょっと苦みが多くて日本のビールに似た味がする。この Pils を樽から直接注ぐと、注意深くやっても確かに泡の量が多くて一定の量になるまでにはしばらく間をおかないといけない。わたしもレストランに入って Pils を注文する時には一度に2杯頼むことにしている。そうすれば一杯目をグッとやったあとに、すぐに2杯目が飲めることになる。(^_^;) この Pils のグラスというのは大抵が0.25リットル入りなので、喉の渇いた時などは一息で飲み干してしまう。そして、たしかにこの Pils の泡はきめ細かくて素晴らしい。

ビールの話になるとついつい筆が走る。(^_^;) 要するに何が言いたかったというと、ドイツには様々な種類のビールがあるので、 Pils だけがドイツのビールだとは思わないで欲しいということ。例えばミュンヘンで飲む Helles というビールはちょっと柔らかな味で、これは樽から直接注いでも Pils のように泡が消えにくいということはなく、注文したらあっという間に出てくる。ドイツに旅行においでの時には、いろいろな種類のビールを、そして、その地方の特色あるビールを飲んで楽しんで欲しいと思います。(2004年11月8日読了) 

Posted: 2004年11月15日 (月) at 16:48 




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