モーツァルトは子守唄を歌わない / 森 雅裕著(ワニの本社) 



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題名にひかれて読んでみた。モーツァルト暗殺がテーマだが、なんとここで探偵役を務めるのがベートーベンなのである。その助手を務めるのがピアノ教則本でお馴染みのチェルニーというので笑ってしまう。15歳のシューベルトが出てきたり、もちろんサリエリも出てくるので、面白くて一気に読んでしまった。文体はちょっと斜に構えたところがあって時々肩すかしを食った感じになるけれど、これもひとつの表現方法だろう。モーツァルトがなぜ暗殺されなければならなかったのか、という結論は、そんなに荒唐無稽なものではなくて、いちおう「そうかもしれない」と思わせるところがあって読んだ後も、馬鹿にされたような気がしなかったのは収穫だった。ちょっとオペラを囓ったことのある人なら面白く読めると思う。1953年生まれの著者は芸大美校の出身らしい。わたしはもっぱら美校の学食を使っていたから、年代を計算すると、学生時代に学食あたりですれ違っているかもしれないと思ったりした。こういう想像は楽しい。(2004年9月18日読了)
 

  

Posted: 2004年09月18日 (土) at 19:28 




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