霞町物語 / 浅田次郎著(講談社文庫) 


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これも、今回日本に帰国するときには持っていった本。なんとなく、このカバーに惹かれたのである。 

これも、読み終えたのは9月も半ばになってから。ようやくホテルで一人きりの時間が持てるようになって、ゆっくりと本を読む気持になった。「霞町」(かすみちょう)という言葉の響きがなんとも快い。ちなみに、わたしは「かすみ草」という花も好きである。あのフワフワとした感じが疲れたときの心を癒やしてくれるような気がする。本当に、日本のお役所はどうしてこんな素敵な町名を変更してしまったのだろうか、と恨めしくなる。

内容はこの作者の得意とする分野なのだろうが、過去への柔らかな追憶を下敷きに、その人たちの存在がその時代でなければならなかった必然を生き生きと描いて、一気に読ませる。特に、主人公のおばあちゃんの描写が秀逸。歌舞伎見物に連れて行って貰い、歌右衛門扮する正岡が出てくる場面で、おばあちゃんが膝をたたいたら「大成駒!」と呼ぶのだと教えられる。ここがいいなぁ。(^_^)
(2005年9月某日、東京で読了)
 

Posted: 2005年10月25日 (火) at 16:29 




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