お尋者・隼小僧異聞 - 物書同心居眠り紋蔵 / 佐藤雅美著(講談社文庫)フッと心が疲れているときなどは、あまり重いものは読みたくない。そんな時には捕物帖の短編集がなかなかピッタリである。今回はこの2冊を続けて読んだ。
「ハイジ文庫」が並んでいる書棚を見ていたら「物書同心居眠り紋蔵
」という副題の文字が目に入った。作者の佐藤雅美氏というのもわたしにとっては初めてのお目見え。初めて読む作家というのはいつでもワクワクする。期待していたとおりに、底にほのぼのとした情感が流れる気持ちの良いシリーズだった。物書同心シリーズはこの2冊の前にも数冊あるらしいので、これまでのいきさつが少し不明だったがそれはそれでよい。
主人公の藤木紋蔵という同心は時と所を構わず居眠りするという奇病のある男で、彼が次々に事件を解決していく。正確に書くと解決というのとは違うかもしれない。事件そのものは見通すのだが、それを彼の手柄にするということもなく、今あるがままのほうが幸せだと思ったらそのままにしておくという度量の深さが時々出てくる。この辺が快刀乱麻の名探偵とは違い、いかにも現実的で、人間くさくて良い。いつか機会があったら「物書同心居眠り紋蔵」シリーズを全て読んでみたい。(2005年11月22日読了) Posted: 2005年11月24日 (木) at 19:23
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