蔓の端々 / 乙川優三郎著(講談社文庫)本の内容は時代劇なのだが、内容としては現代に置き換えても特に違和感のないものである。この本において時代の背景というのは余り重要ではなくて、昔も今も変わらぬ、人間社会の営みの間に起きる、理不尽、葛藤、傷つけ合い、それに対処する人間の心の有り様を描いたものだ。全編を通して「暗い」。途中で読むのを止めようかとも思ったが、最後に来るかも知れない明るい部分を求めて読み終えた。それは適えられたようでもあり、そうでなかったようでもあり、わたし自身が作者に下駄を預けられたような気がした。
(2006年1月読了) Posted: 2006年02月19日 (日) at 23:53
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