雲ながれゆく/ 池波正太郎著(文春文庫)手元にある「剣客商売」を読み終わって、さて、そろそろ次の作家の本に移ろうかと思ったけれど、本棚のその本の脇に「池波正太郎著」という字を見るとつい手が伸びてしまう。こういうときには逆らわずに素直に意志に従うことにしている。(^_^)
今回は女性が主人公。池波正太郎氏が女性を描いても爽やかさを感じさせるのは、この作家が女性に対して本心から一目置いているからに他ならない。わたしも最近になって女性というものがいかにしたたかで、その反面、実にうまく硬軟を本能的に使い分ける名人であるかを思い知らされると、読んでいて共感を持って頷ける箇所が随所に見つけられる。(^_^;) でも男はいつでもそうなのかもしれない。 というわけで、そういう女性であるお歌と馬杉源吾というまるでスーパーマンのような侍との絡みが知らず知らずのうちに読むものを引きずり込んでいく。この侍が余りにも格好良すぎるのがちょっと気に入らなかったが、これは余りにも人間離れして描かれているからか、それとも嫉妬か。(^_^;) それにしてもうまい。「翌日は、去って行った夏の盛りが、物忘れをして引き返して来たような暑さになった。」なんて、どうということもないような文章なのだが、読んでみるとその暑さが実感できるような気になってくる。こんな文章をところどころに見つけることが出来て読んでいて本当に楽しかった。 (2006年5月28日読了) Posted: 2006年06月01日 (木) at 18:29
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