凜冽の宙 / 幸田真音著(小学館)これはJAPAN CLUB の本棚から借りてきた本。幸田真音という作家の名前も始めて知った。(KOHDA MAIN) と読むらしい。ちょっと耳慣れない響き。題名も「りんれつのそら」と発音するのだが,凝りすぎの気がしないでもない。(^_^;) ちょっと驚いたことに、著者は1951年生まれの女性である。巻末の著者紹介を読むと「米国系銀行や証券会社でディーラーや外国債券セールスを経て、95年「ザ・ヘッジ 回避」(文庫版は小説ヘッジファンド)で作家デビュー。」ということで、作家になる以前の職業経験を下地にして金融関係の内幕を描いてきているらしい。確かな説得力が感じられるのはそういうことなのだろう。
この本は「不良債権」をテーマに物語が展開していく。わたしはこの世界のことについては知識皆無なのだが、読んでいるうちにおぼろげながらその内容が読み込めてきた。結局は人間同士の心理作戦が火花を散らす世界のようだ。小説のことだから話の中心に関わりを持つ女性も出てくるのだが、その描き方は透明感のある硬質なもので最後まで男性作家によるものだと思い込んでしまった。 わたしが好感を持ったのは、この作家が心底から日本経済の落ち込みを憂い、一日も早い復活を願っているのが感じられたこと。この人も日本という国、そして日本人を外国人の目で外から見ることが出来た人のようで、この本のそこかしこに、日本人経営者に対してのいらだち、やりきれなさを感じた。世界は違うが、わたしもヨーロッパの舞台でトップクラスの歌手たちがしのぎを削っている日常を見ていると、日本人歌手との相違をたえず考えてしまう。才能のある若い歌い手がどんどんヨーロッパに来て「矢尽き、刀折れる」まで戦ってほしいなと思う。 いつか、機会があればこの作家の「日本国債」という著書を読んでみたいと思った。 (2006年7月27日読了) Posted: 2006年07月28日 (金) at 17:34
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