イーハトーブの幽霊 / 内田康夫著(中央公論社)本編の各所に宮沢賢治の文学が散りばめられていて、宮沢好きの人には興味が尽きないのかもしれない。わたしは宮沢賢治の本というのはまったく読んでいないので、花巻市の描写のほうに関心がいってしまった。本は読まなかったが、わたしがまだ小学生だったころのある夏の夜に、学校の校庭で見た「風の又三郎」のモノクロの映画だけは記憶に残っている。白い布で作られたにわか作りのスクリーンが風で揺れるたびに画面が歪み「風の又三郎」のおどろおどろしい内容と相まって不思議な気分になったことだった。「宮沢賢治ブーム」なる時期があったそうだが、わたしはそれを知らないで過ごしてきた。
ここで書いておきたかったことがもうひとつ。この本の中に一関にあるジャズ喫茶が出てくるのだが、これはフィクションではないようだ。その喫茶店の名前が「ベイシー」と実名で書いてあって、そのマスターの名前はさすがに「笠野」とはなっているがどう読んでもこれは StereoSound 誌に「聴く鏡」という題名のエッセイと写真を連載している菅原正二氏のことだと読めてしまう。(^_^) 菅原氏はわたしにとっていい意味の「こだわりの人」。彼の書くものを読んでいるとその深さに憧れと恐れとを感じてしまう。今年の帰国の際には何とかして一関まで足を伸ばして「ベイシー」を訪れ、彼の丹精したJBLの音を聴いてみたいものだと思っている。(^_^) StereoSound誌の150号(2004年)には、菅原氏と村松友視氏の対談が載っているがこれも洒落ていて楽しい。 Posted: 2005年02月16日 (水) at 22:41
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