ドイツ参謀本部 / 渡部昇一著(中公文庫) 


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ずいぶん前に「文藝春秋」誌だったかで、この著者の書いたものや対談などを読んだ記憶があるのだが、まとまったものはまだ読んだことがないと思う。この文庫本も先に読んだ「炎立つ」と一緒に借りてきたもので、どうしても小説の方に先に手を付けてしまって、この手の本は後回しになってしまう。(^_^;) しかし、読んだあとは、たしかな手ごたえがあって面白かった。 

フリートリッヒ大王→ナポレオン→プロイセン参謀本部誕生→モルトケ&ビスマルクの時代、と時を追って筆が進んでいくのだが、自分が今までボンヤリと読んでいたことが、体系的に述べられているので、時代の流れが素直に頭に入ってくる。やはり、ナポレオンという人物は天才だったのをあらためて知る。また、モルトケ&ビスマルクといった、これ以上望めないような戦略と外交の名手に恵まれた幸せなプロイセン。この辺りの記述には胸躍るものがある。

プロイセンによるドイツ統一ということがなければ現在のドイツはないのだが、生粋のバイエルン人にとってはいまだに何処か、しこりがあるのだろうか。バイエルン人がベルリンを中心とした北ドイツの人をののしる言葉で "Sau Preuße"(プロイセンの豚野郎)というのはよく聞く。バイエルンの方言だと、わたしの耳には「ザウ、プライス」と聞こえる。プロイセンという言葉には「ガチガチに融通が利かない」という意味もあって、日本人がかつて「エコノミック・アニマル」と呼ばれた頃の名残か、冗談半分で、日本人に向かって "Sau Preuße-Japaner" (ザウ、プライスーヤパーナー)とからかう事も良くある。

わたしの義父はわたしが数日泊まっていたときに、 "Wir wollen unsern Kaiser Wilhelm wieder haben....." と口ずさみながら家の中を歩き回っていたが、このヴィルヘルムというのはヴィルヘルム一世(在位1861-1888)であったのだろう。

また、昔読んだ、司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」にも出てきたクラウゼビッツ (Karl von Clausewitz 1780-1831) という懐かしい名前にも出会った。(2005年4月5日読了) 

Posted: 2005年04月20日 (水) at 22:50 




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