敢然と戦う(長文) 


先日の裁判所からの通知のあと、今日は交通警察から正式な通知が来て、われわれの心配が解消したのでそれを記しておきます。事の起こりは数ヶ月前の5月29日(土)のこと。この日の午前中、ブリギッテと彼女のお母さんが一緒に車で、あるスーパーマーケットへ買い物に行きました。帰宅して午後のお茶を皆で飲んでいる時にわが家のブザーが鳴り、出てみると警察官が2人扉の前に立っています「こちらに○○(わたし)さんはいますか」「はい、わたしですが何か?」「今、車の当て逃げの訴えがあって調べに来ました。あなた、今日の午前中にこれこれのスーパーマーケットで買い物のために駐車しましたね。」とこれが事件の始まりでした。 

これを側で聞いていたブリギッテが「いえ、今日の午前中車を運転していたのはわたしですが、わたしはそんなことをした覚えはありません。わたしの母も同乗していたので彼女が証人です」と答えました。そのあと、警察官2人には居間に入って貰い、免許証、車検証、を見せ、調書を作られました。そのあと、警察官が「それでは、念のために車を見せてください」と言われてわれわれは初めて気がつきました。わが家の ROVER にはなんと前部のバンパー左側(運転手側)、それに加えて後のバンパーの右側にも駐車場の壁に擦りつけたかなりの傷が付いているのです。(擦ったのはわたしではありません)(^_^;) 免許取り立てのユリアも運転することだし、かなりの確率で彼女もぶつける可能性が近いからと、修理せずにそのままにしておいたのです。

それまでわれわれに好意的だったように思えた警察官の態度が、地下の駐車場でそれを見た途端に硬化しました。われわれがその傷について説明しても信じていないようで「とにかく擦った部分を写真にとって、相手の車高と比較しなくてはならないので、署まで一緒に来てください。」ということでブリギッテは自分で車を運転して行ったのですが、警察署ではかなりの数の写真を撮られ、疑わしい箇所の塗料をナイフで削り取られたそうです。彼女もかなり昂奮していましたので、帰宅してから「警察に車を傷つけられた、今度は警察に損害賠償を出す」といきり立っていましたが、そこはなだめて事なきを得ました。そのあと、ブリギッテは彼女のお母さんに一部始終を話して少し昂奮もおさまった様子。

さて、落ち着いてみると、どうもこの事件、最近よく聞く外国人による一連の保証金搾取のような気がしてきました。良く聞く例としては、これと目をつけた車の前を走らせ突然ブレーキをかけて追突させ、保証金、修理代金を獲得するというもの。これをやられると、うしろからぶつけた方はほとんど法律的に勝ち目はありません。どんなときでも追突はぶつけた方が悪いというのがドイツの法律です。しかし、今回のように ROVER のナンバーまで控えていながら直接われわれに言わずに警察に通報するという悪質な手口は聞いたことがありませんでした。警察はナンバーからわれわれの住所を捜し当ててきたのです。どうやら、われわれの車の擦り傷を見て考えついた悪事のようです。

ブリギッテは早速友人の女性弁護士に電話をし事情を話しましたら「わかった、あとの処置はわたしがやるから、あなたは何にもしなくていいわよ」ということ。ちなみに彼女は交通事故に関する訴訟の専門家です。彼女に払う弁護士料金に関してもわが家は保険に入っているので、こういう時には金銭の心配なしに弁護士に頼めます。(^_^)

そのあとブリギッテがやった事というのは、地下の駐車場に車を止めている同じアパートの住人たちを訪問して、 ROVER のバンパーの擦り傷がずいぶん前から着いていたものであることに気がついていたか、そしてもし機会があれば、それを証言してもらえるかを頼んだことでした。その結果4人の隣人たちが快く引き受けてくれていつでも証言しましょう、ということになった。こうしてみると、日頃の隣近所の付き合いも大事ですね。もちろんそのことはブリギッテから友人の弁護士に通知しておきました。やれることはやった、われわれとしては任すしかありません。

その後、数度にわたって、ブリギッテの職場に、われわれを訴えたと思われる男性から電話が掛かってきたそうです。最初の電話の時だけ相手が誰だかわからなかったのでお話ししたそうですが「あなたの有利になる話だから、聞いてくれませんか」という調子だったそうです。ブリギッテは即座に「その件は弁護士に一任してありますからお話はそちらとしてください」ということで切ったそうです。そのあともしつこく、何度か同じ男性から電話があったそうですが、ブリギッテは職場の同僚、店主夫妻に一切を説明し、もしこれからもその男性から電話があった時にはわたしは不在であると応答して欲しいと頼み、了解を得たそうです。こういう事は変に脚色しないで、ありのまま話した方がよい結果が出ますね。どうもこの男性、自分の方の分が悪くなったと見て「示談」で取れるだけでも取ろうとしたフシが見えます。

電話をかけてきた時にその男性の名前がわかったので、ブリギッテは電話帳を調べて彼がどこに住んでいるかを調べました。彼の名前とアクセントからどうも旧共産圏の東欧人らしいということは推察していましたが、住所を調べた結果、ミュンヘンでもかなり治安の悪い地域だということがわかり、またまた疑いが深まりました。

そのまま時間が過ぎて先月の末に裁判所から、そして今日は交通警察から「訴えのあった件は全て白紙に戻ったのでそれをお知らせする」といった内容の文書が届き、一件落着でした。

今回の教訓ですが、この様な災難はいつ降ってくるかわからないということ。EU が拡大して旧共産圏から人が自由に出入りできるようになって、今後もっと多くなるのは目に見えています。ポーランドがEUに正式加盟した次の日の新聞には、地下駐車場に置いてある交換タイヤは鎖で繋ぐか、鍵の掛かる物置にしまうことをお勧めする、という記事が出ていました。タブロイド判でなくて、一流の新聞です。理由はタイヤがかの国では高く売れるから、ということでした。(-_-;) 普段から注意しているのはもちろんですが、もし自分がその立場に陥ったら慌てずに毅然とした態度で臨み、敢然として戦うこと。これしかないようです。ヨーロッパに住むことは簡単ではありません。
 

Posted: 2004年08月11日 (水) at 16:08 




1年前の今日は? 2年前の今日は?