「波切り草」(椎名 誠著)

2019年10月6日(日)・曇りときどき小雨/最高気温11度

昨日から読み始めた文庫本「波切り草」(椎名 誠著)を今朝になって読了した。著者、椎名 誠のエッセイとかは読んだことがあるが、まとまった小説を読むのは初めてである。

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しばらく読み進めていくうちに次の箇所が目に止まった。

なんとなく普通高校へは行きたくない、という気持ちがあったのだが、ちょうどうまい具合に県の方針、産業振興に向けた公立の人材育成学校づくりが進められていた。

これはわたしが15歳の頃の状況に酷似している。わたしの場合は家の経済状況から、普通高校には行ってもその先の大学進学への道が見えなかった。そんなところに中学三年生の秋頃に「新産業都市構想」という国の方針から国立工業高等専門学校という5年生の学校が出来ると発表があった。

国立だから授業料も安かったし、自宅から通学出来ればそれまでとは経済的に変わりがない。担任教師のすすめもあって受験、入学した。

いちおう、「工業化学科」というクラスを選んだが、特に化学が好きだったということではなかった。その他の「機械工学科」「電気工学科」がわたしのイメージに合致しなかっただけ。

そからあとのこの小説の展開はわたしの青春時代に似た描写が多かったから感情移入して面白く読み進めた。

読み終わってからこの小説は著者の自伝小説なのかしら、と思って調べてみたら1943年生まれというのでそうではないのだと分かった。

文庫本の解説にはこう書かれている。

この小説は、作家椎名誠が、自ら生まれ育った町、かつてそこにあり、今ではすっかり失われてしまったその町を、せめて物語の中にきっちりと書き留めておこうとした”願い”のようなものと言えるのかもしれない。(宮田珠己)

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