しばらく前から内田康夫の著作集を読み直している。この作家はとにかく多作家でその著作は優に100冊を超えているが友人のおかげでそのほとんどの作品がわたしの本棚に並んでいる。
読み返す前には「読み始めた途端にあらすじを思い出してつまらなくなるだろうな」という不安があったのだが、それがそうでもないことに驚いた。一回目に読んだときに良く読み込まなかったのか、またはわたしの老化現象か、原因は二つに一つなのだが・・・・。(^_^;)
で、先ほど読み終わったのが赤い雲伝説殺人事件 (角川文庫): 内田 康夫 だった。初版が昭和61年(1986年)7月となっている。これが偶然というかなんというか瀬戸内海の寿島での原発誘致に係わった殺人事件なのである。
推理自体はそれほど斬新な物ではないのだが、原発推進派と反対派の葛藤から浮き彫りにされる住民の困惑、欲、きしみなどが今読んでも新しい。現在日本各地に存在する原子力発電所が作られた課程では大なり小なりこの小説に描かれているような軋轢があったことだろう。
昨年の3.11以来わたしの頭の片隅に24時間、巣くってしまって消えることのない原発問題。こんな時にこの本を読んだというのは眼に見えない力が導いたと思わないでもない。