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2006年10月27日

蒼穹の昴(上・下) / 浅田次郎著(講談社)

image この上巻はトスカーナに持っていってそこで読了したもの。評判が良かったので期待していたのだが、あまり訴えてくるものがなかった。それでも本との出会いというのはそれを読んだときの精神状態とか自然環境とかも関わってくるから、トスカーナの明るい光のもとでダラ〜ッとしていたせいかしらと少し疑った。

image 下巻はミュンヘンに戻ってしばらくしてから読み始めた。今度はごく普通の精神状態である。上巻でそれほどの感銘を覚えなかったから、下巻は!と期待して読んだのだがやはり空振りに終わったような気がする。残念。

確か昨年の夏にこの著者の本を読んで感想をアップしたときに、どなたかが薦めてくれた中に入っていたのだという記憶がある。ミュンヘンの JAPAN CLUB でこの本を見つけてすかさず借りてきた。文庫本ではなく単行本というのも贅沢な気分がして嬉しかった。

舞台は清朝末期の中国。科挙制度の描写とか、宦官製造の説明とかはなかなか面白かったのだが、予言者の老婆が度々出てきて主人公たちの未来を占うというのが、どうも流れの腰を折っているような気がしてならなかった。もう少し現実味のある話の展開だと上下二冊に渡る長編が悠々と流れる大河にもなるのだがと、残念。

下巻は列強の浸食を受けて崩れていく清国を描いて、明治維新を思わせる躍動感を感じる部分もあるのだが肝心なところでまた予言者婆さんの出現。気分が乗ったところでスルリと逃げられたという感じがして仕方がなかった。どうも今回はこの婆さんと読者であるわたしとの相性が悪かったようだ。

はるか昔にチャールトン・ヘストン主演の「北京の一番長い日」(題名はちょっと自信なし)を見た記憶が蘇ってきた。