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2007年11月26日

ああ、メンチカツ

メンチカツに対する思い入れがある。HIDAMARI さんのこのエントリを読んでそれが頭に浮かんだ。

「メンチカツ」という語をつぶやくとき、わたしの頭の中には一瞬にして昭和20年代最後〜30年代の寒々しい朝の風景が浮かび上がる。薄暗がりの風景の中から早朝6時を過ぎる頃になると「ころっけ〜、てんぷら、めんち〜」という哀しげな調子の売り声が聞こえてくのだ。売っていたのは私と同年代かもう少し上の男児達だった。

あの頃はコロッケが5円、メンチカツはもう少し高かったような記憶があるがはっきりしたことは憶えていない。コロッケ1個を売って1円というような稼ぎだったのではないだろうか。学校に行く前の学童達が家計の足しにと(自分で使うお小遣いのためではなかった)朝5時過ぎ頃から売り歩いていたのである。

早朝の新聞配達も辛いけれど、コロッケ売りは「売れてなんぼ」だからより辛いものがあっただろうと思う。我が家は兄弟も多く人並み以下の貧乏家庭だったけれど母が「あれだけは可哀相で自分の子供にはさせられなかった」と言ったのを後年聞いた覚えがある。そういう刷り込みがあるので、メンチカツを食べるときの私はいまだにメランコリックな気分に陥るのである。

もちろん納豆売りの子供達というのもいたのだが、なぜだか、こちらの方はもう少し陽性の想い出になっている。「なっと〜、なっと〜、こがらしなっと〜」という売り声を寝床の中で聞くと、ああ、冬だなぁと強く感じていた。

そういう時代背景があったからあの頃には「小判弁当」というのをよく持たされて学校へ通った。弁当のご飯の真ん中に醤油をタップリと染み込ませた1個5円のコロッケが鎮座しているやつ。ほんとうにそれだけで他のおかずは皆無。あれはうまかった!そのコロッケの中にひき肉のかけらでも見つけることが出来たらその日の午後は幸せな気分に浸れたのである。(笑)