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2009年12月03日

恥ずかしかったこと

子供の頃に、「これは恥ずかしい!」と思った事って誰でも一つや二つ覚えていると思うのだが、これはその一つ。

担任が鈴木先生という名前だったから小学校の5年生か6年生の頃の話である。ある日、その鈴木先生が 名簿を作るために、今日は君たちの両親の名前を尋ねるから大声で順番に答えるように。と言って教室の前にある先生用の机に座った。

わたしはギョッとしたあとスッと血の気が引く思いがした。わたしは末っ子である。そしてわたしの両親は周りの級友達の両親よりも遙かに年上であった。何しろ両人とも明治生まれだ。

級友達は何のくったくもなく先生の問いに大声で答えていくのだが、彼たち、彼女たちの両親の名前を聞いていると、「○○雄」「△△子」と現代的な名前が続いていく。はて、困った。実はわたしの父の名は「伊助」母の名は「イシ」というのである。当時のわたしには、これがとてつもなく恥ずかしかった。とても他人の前で口から出せる名前ではない、と思い込んでいた。どうしよう。

わたしの姓は「こ」で始まるから、そうしているうちにもどんどんわたしの番が近づいてくる、心臓はドキドキしてくるし冷や汗さえも流れ出しそう。そして、とうとうわたしの番が来た。そのとき、わたしはどうしたか。

思いあまったわたしはスクッと立ち上がって教壇の脇の机に座っていた先生につかつかと近づいていった。そして鈴木先生に 耳打ちして 両親の名前を告げたのである。

ところが、鈴木先生、武士の情けを知らないというか、子供の傷つきやすい心情を理解しないというか、クスクスと笑い出し、そのうちにこらえきれないようにその笑いがだんだん大きくなっていくではないか。それにつられたように教室中は爆笑の渦。わたしは全身がカーッと熱くなった。

鈴木先生はすぐに わたしが笑ったのは君の両親に対してではなく、君の行動に対してである。と言い訳したが、わたしは内心で ウソだ! と叫んでいた。あれは恥ずかしかったなぁ。

  • Posted by 【篠の風】 at 21時43分
  • Edited on: 2009年12月04日 13時16分
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