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2012年01月15日

人生の先達からの助言

数日前、妻の親類の男性(80歳)から手紙が届いた。これがユーモアに溢れた暖かいものだったので記録しておく。わたしが今年で年金生活に入ることを踏まえて彼なりの感想、助言を書いてくれたのが手紙の内容である。

まず彼は自分の人生を振り返って3つの時期に分けている。ひとつは幼年時代から戦争も体験した貧乏な学生時代。ドイツの敗戦とそれに伴う困窮の時代だったが良い想い出も沢山あったようだ。

ふたつめは医者という職業に就いてから。助手から始まって Oberarzt(上級医師)、Chefarzt(医長)まで経験し、婦人科の医師として年金生活者になるまでに、彼の医局は18000人の子供をこの世に送り出し、25000回の手術をしたと誇らしげに書いてあった。

三つめは年金生活に入ってから。その部分を意訳したものを記す。

年金生活者であること!これは人生の中で最も素晴らしい部分だ。もし、その人が充分に準備していて、興味を持てることを多く持ち、加えて健康であればということだが。

わたしは年金生活に入ってからいっときたりとも退屈を感じたことはない。われわれ夫婦は年金生活に入ると同時に素晴らしい土地、バイエルン州のアッシャウ(Aschau)に引っ越して、ここを愛し、今に至っている。

妻のかたわらで過ごすわたしの生活内容は:文化(ミュンヘンのコンサート社会、ミュンヘン市、ザルツブルグ)、スポーツ(乗馬、スキー、そして夏には山歩き) だ。確かに、わたしも肉体的にここ数年は所々にガタが来ているけれど、それらは克服できることだ。それにはいつでもポジティブ思考をもって全ての素晴らしいこと(例えば音楽)に歓びを見いだせばそれらの問題は自分でコントロールすることが出来る。

ところでどうして君にこの手紙を書いたか分かるかい?  それは、君がこの素晴らしい人生の領域を間もなく迎えようとしていて、君のやり方しだいでそれを楽しめるということだ。そして最後に、

ブリギッテをあまり甘やかさないようにしろ。女性というものは往々にして満足ということを知らない生き物である。

彼の手紙にわたしはすぐに返事のメールを出した。

親切な手紙ありがとう。わたしは年金生活者になることをとても嬉しいと思っているし、毎日「あと何日?」と指折り数えている今日この頃だ。

最も大事なことは健康であることだと思っている。そのために2006年から今日まで一日に一万歩を歩くことを自分に課している。その他の楽しいことは心身が健康であれば自ずと後についてくるものだと思っている。

さて、今回の手紙でわたしは特に次の助言が気に入った。
ブリギッテをあまり甘やかさないようにしろ。女性というものは往々にして満足ということを知らない生き物である。

実をいうと年金生活者になったら、ブリギッテの負担を軽くするために出来るだけ家事を引き継いでやろうと思っていたのだ。しかし、それは賢明ではないことに気がついた。考えを改めなくてはなるまいと思っている。あなたの助言に心から感謝する。

数日後、再び彼からメールがあった。

君の手紙をとても楽しく読んだ。君がユーモアを解する男だと知っていたのだ。さて、友人として君に頼んでおきたいことがある。もし、数週間あとにわたしが君たちの住まいの近くを通るときに、重武装したブリギッテが木の陰とか植え込みに隠れていたら警鐘を鳴らしてくれ。