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2006年10月23日

「自己負担」ということ

昨日、ブランチに招かれた同僚宅に向かう車の中でブリギッテが話してくれたテーマがあった。日本人のわたしにはいかにもドイツらしいというか、かなりラディカルな話だった。

彼女の妹(わたしの義理の妹)はフランクフルトに近いダルムシュタット (Darmstadt) という町に住んでいる。家は自分の持ち家である。今度、市のほうから彼女の家の前の道路を整備する事になったので、その道路に面した家を持っている人は分担された負担金を納めるようにという通知があったそうである。道路の整備とは歩道と車道をキッチリ分けて舗装することであるらしい。

しかし、その負担金を聞いて義理の妹はビックリ仰天、なんと15000ユーロの負担だという。現在の為替相場はユーロが高いので換算すると二百二十四万円という数字なのだが、感覚的には百五十万円だと考えても良いと思う。それにしてもこれは大変な金額である。

その道路に面した家を持つ人達は集まって協議し、ダルムシュタット市に対して、道路の整備をして貰う必要はないという異議申し立てを出したそうだが、あっさりと却下されたとか。法的には市のほうに分があって、それにあくまで反対する場合は最悪の場合そこから引っ越さなくてはならないという。わたしはその話をちょっと信用しきれなかった。

車の中でその話をしながら同僚の家近くまで来ると、なんとその家の前の道路が大規模な工事中であった。それほど幅の広くない道路なのだが、その両側に車道より15cmほど高い歩道が設けられ、車道にあたる部分はまだ舗装されていなくてデコボコ道の状態。これが完成したら、道路の幅からみて物理的に家の前には駐車できないだろうと思われる。ブランチが落ち着いたところで、これをテーマに話してみた。

そうしたら、その内容はダルムシュタット市とほとんど同じもので、違うのは同僚の負担金が7500ユーロ(換算では百十二万円ほど)と、ダルムシュタット市に較べると半分ぐらい安いこと。ミュンヘンはSPDと「緑の党」の議席が多いので行政の方向としては市内から自動車を閉め出す方向に向かっている。この道路整備もその一環ではないかというのはブリギッテの意見である。

しかし、市のこういう処置に住民が抵抗できないというのはどうなんだろう、とわたしは考え込んでしまった。だって、半端な金額ではないから…。反面、こういうラディカルな行政無しには、われわれ日本人が感心する「美しいドイツの町」は出来ないのも確かなようだ。