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2006年12月27日

火車 / 宮部みゆき著(新潮文庫)

image これまで読んだ宮部みゆき作品にあまり感心したことはなかった。波長が合わないというのだろうか、ちっとも面白いとは感じなかったのだが、今回の「火車」はちょっと違っていて、最後までだれずに読むことが出来た。ミステリーには違いないのだが、誰もが感じているカード社会への漠然とした不安感がテーマだったからだろう。

純粋なミステリーとしてこの作品をとらえると、わたしには食い足りない。ほとんど最初から犯人が判明しているし、ドキドキワクワクさせてくれるトリックらしいトリックもない。社会派小説のカテゴリーに入れた方が良いかもしれない。

わたしもクレジットカードは一枚だけだが持っている。ここ数年来、オンラインショップを使うことが何度かあってクレジットカードがないと不便だったから。しかし、使うときにはいつでもセキュリティの不安がある。それ以上に危険だなと思ったことは、わたし自身がクレジットカードを使っていると歯止めが利かなくなる感覚を覚えたことである。例えて云うと、川沿いの道を散歩していてふと足が滑り、そのまま土手道を滑り降りてしまう感じかな。その時にはなんとも感じなくても、そこから元の散歩道に戻ってくるのは心理的にも肉体的にもけっこう負担なのである。

このBlogにも「マック」というカテゴリーを作っているくらいだから、わたしもオンラインソフトには敏感で「あぁ、これ良さそうだな」と思うものが今でもいくつかある。しかしそれを気の赴くままに買っていたら結構な金額になってしまう。これは怖いなぁと思う。そういうときには自分の銀行口座の残額の少なさを痛感してしまう。(汗)

結局、この小説の最大の存在意義はクレジットカードの怖さを拡大して見せてくれたということにある。宮部みゆき、という誰もが知っている著者が書いたことにより、多くの人がこれを読んで、クレジットカードについて考証をうながされる結果になったということは、賞賛されることだろうと思う。
(2006年12月22日読了)