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2007年06月11日

昨夜の La Bohème を観ていて思ったこと

昨日の日記で La Bohème を客席に座って聴いたことを書いた。オペラの間中いろいろなことが頭の中を駆けめぐっていた。この演出の舞台をすべて通して観たのは実に久し振りで少なくとも20年以上も前のことだと思う。

前奏曲のないこのオペラの幕が上がると、そこはボヘミアン達が住む屋根裏部屋。自分でもまったく予期していないことだったが、幕が上がった途端にハッと胸が締め付けられるのを憶えた。記憶は20数年の壁を一気に乗り越えていく。そうだった、あの頃もこのオペラのこの出だしの数小節は何度観てもワクワクするものだった。音楽それ自体がそういう性格を持ったものなのだが、わたしがミュンヘンでこのオペラを見始めた1970年代の終わり頃に、たびたび指揮していたのはあのカルロス・クライバーだったのである。心が躍るのは当たり前か。音楽とか、香りとかいうのは不思議なもので時空を越えて一気にその当時へと連れて行ってしまう。

その頃のある公演で、パバロッティがロドルフォ、フレーニがミミを歌い、クライバーが指揮をするということがあった。当然のことながら切符を取るのは至難のわざで、わたしは友人と交代で夜を徹して並んだ記憶がある。無事に切符が取れて Nationaltheaterの最上階、立ち見席から観たその舞台は当然のごとく素晴らしく、期待をまったく裏切らなかった。1幕でのロドルフォの「冷たき手」とそれに続くミミのアリア「わたしの名はミミ」の素晴らしかったこと、第二幕のカフェ・モミュスの場面でソリスト達がそれぞれの高音を意地を張るようにこれでもかと思いきり伸ばしたときのキラキラとした声の輝きは今でも耳に鮮やかである。

第三幕のロドルフォ、ミミ、マルチェッロ、ムゼッタによる四重唱を聴いているときには、それこそはるか昔の上野の音楽学校時代に、オペラの授業で何度も何度も繰り返えさせられたことを思いだしていた。

ところで、2幕の群衆が溢れる舞台ではオモチャ売りのパルピニョールという小さな役が出てくる。歌うことと言えば、Gis の音で " Ecco i giocatoli di Parpignol! " と2回歌うだけ。のちに研修生となったわたしはこの端役を何度か歌わせていただいた。この役は舞台の後ろからゆっくり出てきて、最初のひと声はかなり後ろから、次のひと声は舞台の真ん前で歌い、ゆっくりと去っていくだけのものだが、けっこう緊張した。昨夜はその場面を客席から観ていて感無量。(笑)

image image その当時のプログラムを保管してあったのでそれをスキャンしてアップしておきます。プログラムの日付を見ると1979年5月23日、ミミ役はカティヤ・リッチャレッリ、そしてロドルフォ役は若かりし頃のホセ・カレーラスだったのですね。不思議なことに、わたしはこの夜のことはまったく憶えていません。