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2008年05月21日

Die Bassariden が終わって

Die Bassariden の初日の幕が開いてから2日が過ぎた。新聞や業界関係者など各方面からの声が聞こえ始めているが、現在までのところネガティブなものは無い。おおむね好評のようである。

今回のオペラは最近になく合唱にとっては大変な作品だった。歌う箇所も多く、音楽も易しくはないし、ほとんど舞台に出ずっぱりで、出ていないときでも楽屋に戻る時間はなく、舞台の袖で待機している状態だった。これはかなりの重労働である。特に初日には2時間半余りの間の集中力持続が大変だった。

初日までの6週間という舞台稽古期間は自分に対するいらだちと不安にしょっちゅう襲われていたが、通し稽古に入ってからはそれも薄れていった。わたしのいらだちがどこからくるものかは自分にもわかっていて、それは演出家 Christof Loy の演出方法によるものであった。彼は前後関係を無視して、このオペラの部分部分を取り出して細切れにわれわれ合唱に演技を付けたのである。わたしは自分がいまどういう状況にいてどのように演技し、どのようにソリストたちに反応したら良いのか、飲み込めないときが多かった。

これまでのオペラ演出方は最初から順を追って稽古が進んで行くということが多かったのだ。考えてみると、今回の手法は話に聞く映画を撮るときのやり方だと思う。ようやく通し稽古に入り全体像が見渡せるようになって「ああ、そういうことだったのか」と思うことが多く、その度ごとにコップの中の氷がゆっくりと解けていくような感慨を持った。わたしの他にも数人わたしと同じような感慨を持つ同僚たちがいたが、そうでない者たちも多く、「ついていけなくなった俺も歳かな?」という気がしないでもなかった。こういう演出法もあるんだということを体験できただけでも良かったと思っている。これからはもっとこういう手法がオペラの世界でも一般化してくるのかもしれない。

ミュンヘン・オペラのホームページ、Bayerische Staatsoper - HOMEにビデオがあります。ページの真ん中より上の方にVIDEOという項目があり、再生法と画質を選べるようになっています。このビデオの最初の音楽が Die Bassariden 冒頭のものです。それから、そのちょっと下のカメラマークの下に Opern.TV という箇所があります。ここをクリックすると違った映像を見ることが出来ます。こちらは iPod Touch などに流し込んでみることが出来ます。

また、ここには舞台稽古時の写真がありますので興味がおありでしたら見てください。