« マック漬けの一日 | Main | 秋晴れの日曜日 »

2008年09月28日

国境の南,太陽の西 / 村上春樹著(講談社文庫)

image トスカーナでの夏休み中に読もうと思って持っていったのだが,佐々木譲の本ばかり読むことになってしまい,ミュンヘンに帰る前の日に読み始め,帰ってきてからはそのまま放っておいた。今夕、読了する。

image この本にはちょっとした因縁があって、実は長いこと探していたものだった。村上春樹氏の本はドイツ語でも翻訳されているものが多くて,わたしはその中の Gefährliche Geliebte を読んでいる。これが印象に残っていていつか原作を日本語で読んでみたいと思っていたのだ。

ドイツ語の方をそのまま直訳すると題名は「危険な恋人」ということになるので村上春樹氏の数多い本の中からそれらしき表題のものを探していたが見つからなかった。それもそのはず,原題は「国境の南,太陽の西」だったのだ。(汗)

昔好きだった女性と再会して、それまでの全てを投げうってその女性との世界に入ろうとした主人公が,またもとの鞘に納まるというありふれた話なのだが,村上氏独特の文体や語彙の使い方によってなんともフワフワとした不思議な感じの小説になっている。

小説の中で主人公が経営する酒場のことをときどき「空中庭園」と表現しているのだが,この小説全体がまさしく「空中庭園」なのではないかと感じた。その言葉がピッタリくるような実態感の薄いそれでいて妙に印象深い作品である。

これは多くの男性が15歳くらいの時に初恋と呼べるものを体験しているから,なのかもしれない。少年だったあの頃に好きだった女の子に逢ってみたいと思うのは,男が持つ淡い願望なのかも知れない。実現しない方が絶対に幸せだとはわかっているのだが。(笑)

2008年9月28日読了