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2009年01月01日

大河の一滴 / 五木寛之著(幻冬舎文庫)

image 久しぶりに五木寛之の本。とは言ってもこれは小説ではなくてエッセイを集めたもの。改めて五木寛之氏の生年を見て、1932年生まれ、わたしより15歳年上の方だという事を確認。意識の片隅ではもっと年上だと思っていた。わたしの姉の一人が同じ年に生まれていて、やはり満州からの引き上げでひどい体験をしている。ふっと著者を身近に感じた一瞬だった。

五木寛之氏の著書はかなりの数を読んでいると思う。ストーリー・テラーとして卓抜な力を持っていながら、どこか人間の深い暗部をも感じさせる彼の作品の数々は、わたしの若いときに好んで読んだものである。

今回読んだこの本は小説ではないのだが、やはり彼のこれまでの軌跡から外れる事はなかった。自身をかなり客観的に見られる人でもあるし、自分を装うのに巧みな人ではあるけれど、彼の底にあるものはある種の「優しさ」だと思う。

「生きる」という事を逆の方向から見るという、これまでに使い古されたような手法で書かれていて、わかってはいてもわたしは読んでいて不思議に元気づけられた。「人生の目的は生きる事である」と五木寛之、その人が語ったからだろう。

しばらく前から数種類のポッドキャストの番組をダウンロードして通勤時、散歩時に聴いているのだが、2008年9月22日の「大竹まことのゴールデンラジオ」で五木寛之氏が出演していた。この人の声は柔らかさがあって聴いていて快い。そこでもこの本に書いてあるような内容を話していたが、その中からゴーリキーの言葉だという「人生はひどいものだ、しかし、だからといって自ら進んで退場するほどではない」を引用しておく。

(2008年12月30日読了)