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2009年01月13日

落語っていいなぁ

昔から落語は大好き。現在は落語ブームだそうだけれど、若い世代が落語を好きになってくれるというのは嬉しいことである。落語を聞いていて、なるほどなぁと膝を叩くことが度々あるが、今日書くこともその一つ。

わが家が共働きになってから14、5年になる。3人の娘達が大きくなるにつれてわたしの稼ぎだけでは心許なくなっていたのがその一番の理由。わたしの仕事は10時から始まるので家を出るのは9時少し過ぎ。ブリギッテの出社時間はわたしより1時間ぐらい早い。当然、わたしが毎朝彼女を送り出すことになる。

仕事だから楽しいとき、良い時ばかりではない筈で、それをねぎらう意味でも毎朝わたしはアパートの入り口まで見送ってやり、日本語で「行ってらっしゃい」と声を掛ける。こういう習慣はドイツにはないのかも知れない。少なくともそれに相当するドイツ語というのは無いのである。それを言われた当人はやはり嬉しいらしい。笑顔と共に手をヒラヒラさせながら日本語で「行ってきま〜す」と言いながら出掛けていく。

ごく、たまにそれが逆になることがあると、彼女がわたしを見送ってくれる。日本ではそうするものだと思うらしい。しかし、このときにわたしに掛けてくれる言葉が何度教えても「行ってきま〜す」というのはご愛敬。最初の頃は訂正していたがそのうちに面倒くさくなった。(^_^;)

落語の話に戻る。白状すると、わが家のこの習慣は実は落語から仕入れたものなのである。確か「おばあさん落語」で有名だった古今亭今輔師匠 (5代目) の高座だった。細部は違うけれど枕で次のようなことを話していたのである。

旦那がどうのこうのと愚痴を言ってるそこの奥さんがた、亭主なんて朝に家を出て外で稼いで、夜に帰ってくる馬だと思えばいいんですよ。亭主が家を出ていくときに、嘘でもいいから三つ指でもついて「行ってらっしゃいませ」と送り出してご覧なさい。男なんて馬鹿ですからそれが嬉しくて、それこそ馬車馬のように一所懸命働きますよ。亭主の居ない間は昼寝をしても隣の奥さんとおしゃべりをしてもまったく自由、夕方になって亭主が戻ってきたらまた猫をかぶって「お帰り、疲れたでしょう」と熱燗の一本も付けてあげれば亭主はそれで満足して、また明日も喜んで働きに出るもんなんですから・・・・

わたしは今輔師匠の言葉を実行しているに過ぎないのだ。誤解されると困るのだが、わたしはブリギッテを馬車馬だと思っているわけでは決してない。ただ、出掛けるときには笑顔で送り出されたら気持ちいいだろうなぁ、と思うだけである。落語っていいなぁ。(^_^)