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2011年01月09日

なぜにそんなに帰宅を急ぐのか?

その日の公演が撥ねてから、帰宅の途につくまで、わたしはかなりゆったりと身支度を調えるほうである。わたしの座っている楽屋はわたしを入れて6人なのだが、わたしがそこを出るのはだいたい一番最後か最後から二番目。

今シーズンから若い同僚が他の楽屋からわたしの隣の席に引っ越してきた。彼は本を読むのが好きな男で、われわれの楽屋が一番静かであるという理由で、隣の同僚が定年になりその席が空くのを待っていたのである。

この若い同僚が、公演終了後の身支度のものすごく速い男で、これまでわたしが体験した中ではおそらく最速である。殆どの公演で言えるのだが、わたしが楽屋に戻ってきた時には化粧を落として既に私服に着替え始めている。思わず 「君、ちゃんと衣装を着けメークをして最後の場を歌ってたか?」と質問してしまうほど。

さて、先日(1月3日)の「愛の妙薬」の公演にブリギッテと長女が観に来ていた。終演後に楽屋口で待ち合わせる約束をしていたのだが、ブリギッテに 「外で待ってるのは寒いから、今夜はなるべく早く出てきてね。」と念を押されていた。彼女はこれまでの長い付き合いで、わたしが身支度に時間が掛かることを嫌というほど経験しているのだ。それで今日こそは早く出てきて驚かせようと思い、若い同僚に彼のノウハウの教えを請うことにした。彼が示してくれたのは次の点であった。

1.私物は最後の出番の前にカバンの中にしまっておく。
2.私服はロッカーから出して椅子の背に身に付ける順に重ねておく。
3.最後のカーテンコールは出来るだけ舞台出口に近いところに立つ。
4.カーテンがあと1メートルぐらいのところまで下がったらすかさず舞台をあとにして楽屋を目指して走る!この時にエレベーターは使わずに階段を一段飛ばして駆け上がる。(われわれの楽屋は舞台から3階上にあるんだけど)

一緒に行動してみると彼の動作には無駄がない。わたしもそれに習って頑張ったが、その夜はわたしが化粧を落とした時点で彼は "Tschüß" の挨拶も軽やかに楽屋を出て行った。

それでもその夜はわたしにとっては記録的ともいうべき速さだったので楽屋口でブリギッテを5分くらいも待つ羽目になってしまい、彼女には 「どうしたのよ!」と驚かれた。

確かにこうすれば早く劇場を後にすることが出来て、もしかすると一本早いトラムに乗ることが出来るかもしれない。しかし......... 「ヤダッ!」(笑) こんなにストレスを掛けて早く家に帰る意味がわたしにはわからないのだ。(本来ならどこかに立ち寄ってちょっと一杯引っかけて、というのが理想である)

次の日に、わたしより20歳ほど若いその同僚にはノウハウを教えて貰った礼を言ったあと、皮肉めかして 「君の家にはそんなに急いで帰りたいほど楽しいことが待ってるのか?」と冷やかしておいた。