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2011年10月31日

「ホフマン物語」の Premiere

今夜は Premiere 。全てにわたってゲネラルプローベの時よりもはるかに良い出来だった。ソリストたちも安定していて、決めるところはバシッと決まっていた。終わってみればやはりタイトルロールの Rolando Villazón に尽きる。

Rolando Villazón は最初から最後まで絶好調。舞台裏での挙動を見ていると相当ナーバスになっているのは確かだったけれど、舞台上では役の中に入り込んでしまってホフマンの狂気を迫真の演技で表現していた。大変な役だけれど彼にははまり役ではないだろうか。後半に入ってからテノール殺しとでも言いたいような難しいアリアがある。高いラーゲを半音きざみに音型が上がっていく部分なのだが、凄い緊迫感をもってグイグイと引っ張っていった。見事だった。

舞台上で聴く彼の歌唱は普通のテノールとはかなり違う。全ての声が身体からスッと浮遊していて、高級オーディオのスピーカーが作る見通しの良い音場感を連想させる。静電型スピーカの音に似ている。反対に言えば胸声というものが聞こえて来ない。これを物足りないと思う人は絶対にいると思う。しかし、客席で聴く人の耳にはきっとまた違って聞こえているのかも知れない。本質的に彼の声は重い役を歌ってはいけないと思うし、これからもあまり歌い過ぎないで欲しい。

今回のプロダクションの目玉とされていて、大いに宣伝されていた Diana Damrau は、良く歌ってはいたが、時折「おや?」とおおもう場面があった。オリンピア役は彼女の声質にピッタリだと思うのだが、その他の役は現在の彼女には負担が重すぎる。それがオリンピアの歌唱にまで影響し、彼女本来の持ち味を殺してしまった面が伺えた。

今回の公演で「オオッ!」と思ったのはメゾソプラノの Angela Brower 。これまでもミュンヘンの舞台では小さな役で登場していて、今回が大役では初めて聴く。低域から高域まで無理なくしっかりとした声が出ていたし演技がうまかった。どちらかというと高音域の力強さと輝きの方が低域よりは勝っている。これからはちょっと重めのソプラノの役も歌っていけるのではないか。

カーテンコールでも Rolando Villazón が主役。客席のブラボーと拍手に奇声を発して応えたり、コーラスに向かって(客席を背にして)まるでサッカーの応援団長のようなはしゃぎ方。 Premiere の時には観客の演出チームへの対応がいつも興味深いのだが、今回はノリノリの Rolando Villazón 自ら舞台の袖に行って演出家チームを誘導してきたから観客席はブラボーと拍手の嵐。わたしの耳にはほんの少しブーが聞こえたのだが Rolando Villazón の演出(?)でかき消されてしまった。(笑)

Besetzung

Musikalische Leitung: Constantinos Carydis
Inszenierung: Richard Jones
Bühne: Giles Cadle
Kostüme: Buki Shiff
Choreographie: Lucy Burge
Licht: Mimi Jordan Sherin
Produktionsdramaturgie: Rainer Karlitschek
Chöre: Sören Eckhoff

Olympia / Giulietta / Antonia / Stella: Diana Damrau
Cochenille / Pitichinaccio / Franz: Kevin Conners
Lindorf / Coppelius / Dapertutto / Mirakel: John Relyea
Nikolaus: Angela Brower
Stimme der Mutter: Okka von der Damerau
Hoffmann: Rolando Villazón
Spalanzani: Ulrich Reß
Nathanael: Dean Power
Hermann: Tim Kuypers
Schlemihl: Christian Rieger
Wilhelm: Andrew Owens
Crespel / Luther: Christoph Stephinger

Bayerisches Staatsorchester
Chor der Bayerischen Staatsoper

Les Contes d'Hoffmann から2011年10月31日に引用