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2008年10月20日

楽園(上・下巻)/ 宮部みゆき著(文芸春秋社)

image image 先の『天狗風』に続いて宮部みゆき作品を読んだ。同じく,Japan Club からお借りしてきた単行本である。とても読み応えのある上・下巻だった。

読み始めてしばらくして気がついたのだが,主人公の前畑滋子の扱いがどうもシリーズ物のような感じである。作中に「9年前の事件で手痛い失敗をした」とかどうとか書かれているのだが,初めて読むわたしには不可解な文章である。

上巻のテーマは先に読んだ捕物帳『天狗風』と同じく超能力であったから,この作家はこういうジャンルのものを良く書く人なのかと思った。わたしも『超能力』とか『見えざる大いなる力』とかの存在を頭から否定しない種類の人間なので、おもしろがりながら読み進めていった。しかし上巻の終わり近くから話は現実味を加えて俄然面白くなってくる。

下巻に入ってからは事件そのものを掘り下げていく形になって悪くはないのだが,残念なことに下巻の三分の二あたりでわたしには解決のメドがついてしまった。推理小説好きとしてはもうちょっと引っ張って夢を持たせて欲しかった。

Wikipedia で調べてみるとこの作家は現在まだ47歳。書き盛りという年代だろう。とても力量のある人であることは疑いがない。個人的には粘液質な部分にちょっと閉口するところもあるが、それもこの作家の持ち味なのだろう。55歳を過ぎた頃のこの作家の作品がどんな諧調になるのか楽しみである。

過去の自分のブログを検索してみたらR.P.G.(ロール・プレーイング・ゲーム)/ 宮部みゆき著(集英社文庫) の他に、理由火車というのも読んでいた。実をいうと、これらの本の内容がまったく記憶に残っていないのだが。

最後の作者自身による『あとがき』で,この本が『模倣犯』のあとに書かれたものであることを知った。9年前の事件というのは『模倣犯』のことであるらしい。数年前に『模倣犯』を一度は手に取った記憶があるのだが,パラパラとベージをめくっただけでなんだか暗い小説に思われ、本棚に戻してしまった。今回『楽園』を読んだあとは,『模倣犯』もぜひ読んでみたい。

(2008年10月18日読了)