わたしはこのオペラを観たこともなければ演じたこともない。わたしが Nationaltheater で歌っていた26年間、このオペラが掛かったことはなかった。
ただ、このオペラの中でライオネルという役が歌うアリアはテノールの定番で,
学生時代に勉強したことはある。
それと「庭の千草」としてよく知られているアイルランドの歌「夏の名残のばら」(The Last Rose of Summer) がオペラの中で歌われることぐらいを知識としては知っていた。
どうしてこのオペラが Nationaltheater で上演されていないのかを、舞台を観ながら考えていた。スメタナの「売られた花嫁」が上演されているのなら「マルタ」がそうでないのはどうしてなんだろう? その時その時の劇場支配人のポリシーなのだろうか。
確かに音楽的にはこれといって光る部分はないように思う。かなりオペレッタ寄りの作品といっても良い。今夜の聴衆はかなり熱烈なブラボーを送っていたけれど、そういう層の聴衆に向けられた作品なのかも。
今夜のソリストの中では主役の2人がやはり舞台を支えていた。その他のソリスト達は聴いていて時に気恥ずかしさを感じて舞台から眼をそらせることが数度。^^;
それと今夜の指揮者のテンポにはときおり違和感を感じた。例えばライオネルを歌ったテノールはスピントで高音も安定し、とても良いと思った。それだけに彼の歌うアリアはもう少し叙情的でタップリしたテンポで歌わせてあげたかった。
そして一番安定していて楽しく聴けたのは「合唱」だった。(^_^)
ROLIOT の演出はときおり「クスッ」と笑えるところもあったけれど、大団円の数分間はこれぞ ROLIOT という感じで「ああ、面白かった!」と聴衆に感じさせるものだった。このへんはちょっとあざといけれど流石。